今回は世界の漁獲量ランキング及び乱獲対策のランキングです。
世界における水産資源減少の問題
マグロやウナギなどの高級魚に続いてサンマやサバなどの大型魚も乱獲にさらされて減少し、食卓から遠ざかるという現実は、水産資源の保護が極めて身近で待ったなしの問題となっています。
自然の大海を回遊する魚は、先に獲ったものに所有権が発生することが、乱獲競争の根絶を困難にしています。
養殖がこの問題を解決する手段としてクローズアップされていますが、えさとなる魚粉の供給や海洋汚染などの問題が新たに発生しています。
水産資源の維持には国際的な漁業規制を行うことが必須であり、規制が必要な魚種は今後ますます増え続けることが推察されています。
世界の漁獲量ランキング
(順位:国名 漁獲量 前年比)※2017年時データから
1位:中国 1550万t ↘
2位:インドネシア 670万t ↗
3位:インド 540万t ↗
4位:アメリカ 500万t ↗
5位:ロシア 490万t ↗
6位:ペルー 420万t ↗
7位:ベトナム 330万t ↗
8位:日本 320万t →
9位:ノルウェー 240万t ↗
10位T:フィリピン 190万t ↘
10位T:チリ 190万t ↗
世界合計: 9250万t ↗
(出典:FAO「Food Outlook May2019」)
日本の状況
日本の順位は8位と前年の7位から順位を一つ下げました。カナダの研究チームの報告では日本が2015年に輸入した天然水産物のうち約3割が不正な漁業によって漁獲されたとの指摘がされております。とりわけ中国から輸入されたウナギは4分の3がこれに該当するとしています。
また不良が続くサンマ漁について、水産庁はこれまで漁期を限定していたのを、大型船に限り日本のEEZ(排他的経済水域)外の公海で通年での操業を認めることとしました。
太平洋の状況
太平洋のクロマグロは乱獲により資源量がピーク時の約8分の1に減少。日本を含む26か国・地域が参加する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が資源管理を行い、漁獲量を規制しています。日本は資源量が回復しつつあるとして漁獲枠拡大を求めているがアメリカなどは時期尚早などとして反対しています。
大西洋の状況
ノルウェー沖の北大西洋でとれるサバは、日本でも「ノルウェーサバ」のブランドで人気が高いものの、近年は乱獲により漁獲量が減少。2011年に479万tあった北大西洋サバの資源量は18年には275万tを下回っています。
EUの「共通漁業政策(CFP)」は加盟国に他の加盟国の経済水域内での漁業を認めていますが、イギリスがEUを離脱した場合、その水域から他国の漁船は締め出されてしまう可能性があります。イギリスはフランスなど12か国と締結したロンドン漁業条約から離脱すると発表しており、他国による自国水域内での漁業を拒む姿勢を見せております。
世界の乱獲対策(IUU漁業指数)
乱獲を行う漁業をIUU漁業(Illegal=【違法】、Unreporeted=【無報告】、Unregulated=【無規制】)とよび、その対策が国際的な課題となっています。IUU対策はEU(欧州連合)が主導しており、非協力的な国に対して禁輸などの制裁を行っています。
IUU対策がどの程度進んでいるかを評価する「IUU漁業指数」が公表され世界152か国がランク付けされています。この指数は以下の3つの指標を各国が互いに評価していて数値が高いほど対策が遅れていて、数値が低いほど対策が進んでいることを示しております。
①「脆弱性」・・IUU漁業にさらされるリスクを評価
②「普及」・・IUUと判明または疑われる漁業を評価
③「対応」・・IUU漁業の減少を目的とした政策を評価
IUU漁業指数ベスト5
1位:ベルギー 1.43
2位:ラトビア 1.57
3位:エストニア 1.67
4位:フィンランド 1.67
5位:ポーランド 1.68
IUU漁業指数ワースト5
1位:中国 3.93
2位:台湾 3.34
3位:カンボジア 3.23
4位:ロシア 3.16
5位:ベトナム 3.06
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19位:日本 2.63
(参考:IUU Fishing Index)
ワースト国の背景としては、EEZ(排他的経済水域)が広大でIUU漁業がEEZ内で発生するリスクが自然と高くなる上に、水産資源からのたんぱく質摂取が多いこと。またカツオやマグロなどの遠洋漁船登録が多いことも影響しています。