郵便物数の減少とネット取引普及に伴う小包配送の競争拡大
年末のニュースで年賀はがきの発行枚数が平成以降では過去最低を更新したと報じられました。実際にここ10年もの間は毎年減少の一途をたどっております。
日本に限らずかつて郵便事業は公共性が高く、事業収益の柱は郵便料金でしたが、電子メールやSNSの普及で郵便物の数は減少しつづけています。それにより郵便事業の赤字体制は慢性化しています。各国の郵便事業体は、民営化による改革の推進やM&Aなどで生き残りを図るが、郵便料金の値上げを余儀なくされるケースも多くなっています。今後はネット通販市場の拡大で増加する小包配送が郵便事業復活のカギになるとみられ、既存の宅配業者との競争激化が予想されます。
今回はそんな世界の郵便物数の国別ランキングを発表いたします。
世界の郵便物数ランキングTOP10
(順位:国名 国内郵便物数 )
1位:アメリカ 1424億4900万通
2位:ドイツ 193億0200万通
3位:日本 179億8100万通
4位:イギリス 158億5247万通
5位:フランス 120億4500万通
6位:ブラジル 80億4502万通
7位:中国※1 44億8004万通
8位:オーストラリア 38億6239万通
9位:韓国 38億0965万通
10位:イタリア 32億0805万通
(出典:UPU Postal Statistics データは2013~2015年のもの)
アメリカの状況
2018年、万国郵便連合(UPU)からの離脱手続きを始めると発表しました。理由としてはUPUの万国郵便条約では、相手国の郵便事業者に支払う到着料が新興国や途上国では割安に設定されていて、中国が新興国として適用されていることを問題視したことによります。19年にUPUはアメリカの要求を呑む形で制度改革に合意し、今後段階的に受け取り国が料金を設定できることになり、アメリカのUPU離脱は回避されました。
日本の状況
ネット通販の利用拡大に伴い日本郵便の「ゆうパック」は好調で、2019年4半期で取扱量が1割増えています。一方で郵便事業の根幹ともいえる郵便物は減少傾向が続いているなか、追い打ちをかけるようにグループ会社のかんぽ生命での不正が発覚し、苦境に立たされています。
年賀はがきの発行枚数もSNS普及に伴い減少傾向が続いており、厳しい状況が続いております。今後日本郵便は国際小包装に力を入れることで新たな市場開拓を目指しています。
続いては年賀はがきの発行枚数の推移です。
年賀はがき発行枚数の推移(2009年~2019年)
2003年※44億5936万枚(対前年)※ピーク枚数
2009年 38億9777万枚 ↘
2010年 38億2025万枚 ↘
2011年 36億6578万枚 ↘
2012年 35億8730万枚 ↘
2013年 34億1596万枚 ↘
2014年 33億0173万枚 ↘
2015年 32億0167万枚 ↘
2016年 31億4208万枚 ↘
2017年 29億7857万枚 ↘
2018年 25億5930万枚 ↘
2019年 23億5000万枚 ↘
年賀はがき発行枚数はピーク時の43%減に
上記推移の通り、年賀はがきの発行枚数は2003年の44億枚をピークに年々減少していて、2019年は23億枚とピーク時の43%減となっています。これは今後も同様の傾向を示すと思われます。
また人口あたりの年賀はがき発行枚数(日本に住んでいるいる人が全員年賀ハガキを購入したときに一人当あたり何枚になるのか)はピーク時の2003年が1人当たり35枚と最高数となっていて、直近の2019年発行分ではそれが18.6枚(当初発行枚数で試算)まで減少しています。