今再び宇宙が熱い!
人工衛星 ニーズの増大
現在の我々の生活において、人工衛星の存在は必要不可欠なものになっています。主な役割としては、大きく分類して観測、放送・通信、測位などがあげられます。以前は人工衛星といえば気象観測や衛星放送などのイメージが大きかったと思いますが、スマホやキャッシュレス化の進展に伴って、通信と測位のニーズが大きく高まっています。
特にIot(モノのインターネット化)の加速により、通信接続出来ることが生活において絶対的な条件となってきていて、人工衛星は通信インフラを支える手段として、更に重要さを増しつつあります。
その中でも、従来の大型衛星に比べ小型(50cm四方程度)・低重量(200kg以下)で必要高度も低く(数百km~)、低コストで開発可能な小型衛星は実用化しやすいことから近年急増しています。
小型衛星ニーズが高まる中で、人工衛星は今後2030年までには年間5000基を超える打ち上げ数が予測されています。(2017年実績469基)
新たな宇宙時代と中国、インド、民間企業の台頭
かつて宇宙開発は、アメリカとソ連(ロシア)において国威発揚と安全保障の要請から、熾烈な宇宙開発競争を行ってきました。そしてそれが結果的に、軍事面以外の分野での宇宙利用(GPS、放送・通信、気象観測)にもつながってきました。
現在においては、衛星ビジネスの他に、火星や「深宇宙」探索や月などの宇宙資源開発、宇宙旅行ビジネスに注目が集まっております。
そして宇宙開発の主体も、これまで米ロ2大国にヨーロッパや日本が続いておりましたが、現在は中国、さらにはインドが存在感を増しています。またスペースX社などに代表される民間企業も重要なプレーヤーとして浮上しております。
中国は2022年、インドは2029年に独自の宇宙ステーション構築の計画を進めており、スペースX社のイーロン・マスク氏は、NASAより早い2024年の有人火星飛行計画や、2060年代中の100万人火星移住計画を発表しています。
次に国・地域別のロケット打ち上げ数ランキングをお示しいたします。米連邦航空局が2018年発表したデータを元にランキングしたものです。
国・地域別ロケット打ち上げランキング(2017年実績)
【順位:国名 打ち上げ数】
1位:アメリカ 268
2位:欧州 91
3位:中国 36
4位:ロシア 24
5位:日本 16
6位:インド 9
7位:オーストラリア 5
8位:カナダ 3
9位:韓国 3
10位:イスラエル 2
10位:南アフリカ 2
10位:台湾 2
10位:トルコ 2
(参考)2017年世界合計 469
(出典:日興アセットマントマネジメント調べ「米連邦航空局発表資料2018より」)
打ち上げ数の内訳として、実にその96%を人工衛星の打ち上げが占めています。国別打ち上げ数の近年の傾向としては、これまでの累計での打ち上げ数で旧ソ連時代を含めて首位であったロシアの打ち上げ数が減少しています。一方、アメリカはロケット打ち上げの約8割を民間企業が占めるようになっています。欧州も同様に民間企業の割合が半数以上となっています。
日本では2019年5月に初の民間ロケットの打ち上げ成功
日本においては、2019年5月4日に北海道大樹町の発射場でインターステラテクノロジズ社(IST)が民間で初となるロケット打ち上げに成功いたしました。これは小型ロケット「MOMO(モモ)3号機」による3度目の正直となる発射によるものです。このIST社はホリエモンこと堀江貴文氏が取締役を務めるベンチャー企業ですが、民間によるロケットビジネスの扉を開く大きな一歩となりました。今後、日本においても民間企業参入による、宇宙ビジネスの拡大が大いに期待されるところです。(2019年7月発射の4号機は打ち上げ失敗)
さらに重要性を増す宇宙分野 、航空自衛隊「宇宙作戦隊」創設へ
これらの流れから、宇宙分野はビジネス分野のみならず、国防にも大きく関係しています。現在宇宙関連部隊を所持しているのはアメリカ、ロシア、中国、イスラエルなどの国ですが、日本においても宇宙作戦隊が新たに創設されることになりました。
令和2年度(2020年度)予算案において、航空自衛隊に「宇宙作戦隊(仮称)」を創設するとの関連経費が盛り込まれました。
現在のところ、この新たな「宇宙作戦隊(仮称)」は2020年度、府中基地に20人で新編を予定しております。
主な任務はJAXA(宇宙航空研究開発機構)やアメリカ宇宙軍と協力して、宇宙空間の常時監視体制を構築することで、スペースデブリや他国の人工衛星等が日本の人工衛星に影響を及ぼさないようにすることを目的としています。
アメリカも宇宙軍を再編
アメリカにおいては、すでに1985年に宇宙軍が創設されておりましたが、これまでは空軍の隷下組織という位置づけとなっていました。しかし、2019年8月にトランプ大統領肝いりにより再編され、陸海空軍、海兵隊、沿岸警備隊に続く「第6の軍」として、「宇宙軍」がフル規格の統合軍として発足しました。当初は空軍の宇宙関連部隊を中心に1万6000人が移動する予定となっています。
続いてはこれまでに宇宙に行った人の人数を国別にランキングしたものです。
国別・宇宙に行った人の数ランキング
【順位:国名 人数(男性、女性)】
1位:アメリカ 345(296、49)
2位:ロシア(旧ソ連)122(118、4)
3位:日本 12(10、2)
4位:ドイツ 11(11、0)
5位:中国 11(9、2)
6位:フランス 10(9、1)
7位:カナダ 10(8、2)
8位:イタリア 7(6、1)
9位:ブルガリア 2(2、0)
10位:オランダ 2(2、0)
10位:ベルギー 2(2、0)
10位:イギリス 2(1、1)
10位:ハンガリー 2(2、0)
(出典:JAXA)
有人の飛行はまだ少ないが、今後大幅に増える可能性大
国別集計のTOP10をランキングでは、アメリカ・ロシアが飛びぬけています。
3位以下は団子状態ですが、日本は12名の第3位と健闘しています。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の調べでは、2019年4月時点でこれまで宇宙に行った人の数は562人となっています。(同一人物の複数回飛行は重複カウントせず)
ちなみに現在、有人の打ち上げが可能な国はロシアと中国の2カ国のみで、スペースシャトル退役後のアメリカは、NASAやスペースX社が新たなシステムを開発中です。
宇宙空間への今後の有人計画
今後の宇宙空間への有人計画としては、アメリカでは2024年にNASAが計画している新型宇宙船「オリオン」による有人月面着陸の計画や、2033年以降の計画として有人深宇宙輸送機「DST」を活用した有人火星探査計画があります。
また中国では2022年頃に宇宙ステーション完成を見込んでいて、ロシアは宇宙ホテルの建設を検討中としています。
イーロンマスク氏のスペースX社は2024年に火星への有人飛行を計画しています。そして、ZOZO前社長の前澤友作氏が表明した民間人初となる2023年の月旅行もスペースX社との契約によるものです。そして実現すると1972年のアポロ17号以来の月への人類到達となります。