- 新型コロナにより医療崩壊が起きたイタリア
- 世界の人口あたり病床数ランキング(G7+3カ国)
- 日本の病床(病院ベッド)数は世界で突出して多い
- 日本の感染症指定医療機関の状況
- 都道府県別病床数ランキング(人口あたり)
新型コロナにより医療崩壊が起きたイタリア
新型コロナウイルスの感染拡大がヨーロッパを中心に更に拡大しています。
特に被害が大きいイタリアは、近隣のドイツやフランスに比べ感染者数、死亡者数ともに爆発的に増加してしまいました。
その要因として、中国武漢市の時に同様に感染者の受け入れ数に対する病床(病院ベッド)数の不足が指摘されています。
今後、日本においても海外からの再流入で一気に感染が拡大する可能性が無いとも言い切れません。
もちろん、他にも医療従事者数、医療機器など設備の充足など様々な要因が関係するところではありますが、今回は、日本の病床数についての考察を行いたいと思います。
日本の人口あたりの病床数は、世界1位との報道もされていますが、他の主要国の状況と比較してどうなのか調べてみました。
まずは人口あたりの病床数のランキングです。調査対象はWHO加盟の世界113カ国ですが、ランキングは先進7カ国(G7)に加えて、新型コロナ感染が拡大した3カ国(中国、イラン、スペイン)の10カ国で比較しております。
世界の人口あたり病床数ランキング(G7+3カ国)
順位 | 113カ国順位 | 国・地域名 | 千人あたり病床数 |
---|---|---|---|
1 | (1) | 日本 | 13.70床 |
2 | (5) | ドイツ | 8.20床 |
3 | (11) | フランス | 6.90床 |
4 | (39) | 中国 | 4.20床 |
5 | (47) | イタリア | 3.60床 |
6 | (51) | イギリス | 3.30床 |
7 | (54) | スペイン | 3.20床 |
7 | (54) | カナダ | 3.20床 |
9 | (60) | アメリカ | 3.00床 |
10 | (84) | イラン | 1.70床 |
世界平均 | 3.63床 |
【参考:WHO発表(2009年)データより作成】
日本の病床(病院ベッド)数は世界で突出して多い
上記データは少し古いものですが、検証したところ、現在も順位に大幅な変更はないようです。(直近の中国は不明)
最も新しいOECDのデータ(2017年調査)では、イタリアが千人あたり3.2床と更に減少しています。
イタリアの病床数は、調査対象113カ国の平均を下回る水準となっています。
現状はイタリアの致死率が著しく高いのに対して、隣国ドイツでは感染者数は増えていながら、致死率は大幅に抑えられています。致死率には多くの要因が絡むことですが、結果として病床数は大きく関係していると考えざるを得ません。
他にも欧州で死者数が急増してきているスペインも病床数は平均を下回っています。
そして欧州以外ではアメリカがイタリア、スペインよりも更に人口あたりの病床数が少ない状況です。
今後一部のエリアで局地的に感染拡大したときに、受け入れのベッドが足りなくなり、医療崩壊を起こす可能性も十分にあり得ると予測できます。
その中においては、日本の病床数が非常に多い状況であることがわかります。しかし、全国の病院における病床利用率は平時で82.9%(厚労省発表H30.1)と高く、空いているベッドは多くないので、楽観は出来ないと思います。
続いては、日本国内の状況についても見ていきたいと思います。
日本の感染症指定医療機関の状況
現在、感染症患者を受け入れるために、医療法によって国から感染症指定医療機関として指定されている病院の数は以下の通りとなります。
特定・第一種感染症指定医療機関
- 特定感染症指定医療機関 : 4医療機関(10床)
- 第一種感染症指定医療機関 : 55医療機関(103床)
第二種感染症指定医療機関
- 感染症病床を有する指定医療機関351医療機関(1,758床)
- 結核病床(稼働病床)を有する指定医療機関184医療機関(3,502床)
結核指定医療機関
-
結核指定医療機関(※2) : 136,602医療機関(平成31年4月1日現在)
感染症指定医療機関の指定状況(平成31年4月1日現在)|厚生労働省
2月2日に厚生労働省から、新型コロナの感染者受け入れについて、緊急時及びやむ負えない場合には、上記指定以外の一般病床においても受け入れ可能とする事務連絡が出されました。
以下にすべての病床数を都道府県ごとに人口千人あたりの病床数を算出したランキングです。
都道府県別病床数ランキング(人口あたり)
順位 | 都道府県 | 病床数 | 人口千人対 |
---|---|---|---|
1 | 高 知 | 18,014 | 25.5 |
2 | 鹿児島 | 33,306 | 20.6 |
3 | 熊 本 | 34,540 | 19.7 |
4 | 徳 島 | 14,359 | 19.5 |
5 | 長 崎 | 26,037 | 19.4 |
6 | 山 口 | 26,235 | 19.2 |
7 | 佐 賀 | 14,743 | 18.0 |
8 | 北海道 | 93,871 | 17.8 |
9 | 宮 崎 | 19,029 | 17.6 |
10 | 大 分 | 20,030 | 17.5 |
11 | 福 岡 | 85,122 | 16.7 |
12 | 愛 媛 | 21,794 | 16.1 |
13 | 富 山 | 16,389 | 15.6 |
14 | 石 川 | 17,785 | 15.6 |
15 | 島 根 | 10,450 | 15.4 |
16 | 鳥 取 | 8,491 | 15.2 |
17 | 秋 田 | 14,874 | 15.2 |
18 | 香 川 | 14,459 | 15.0 |
19 | 岡 山 | 28,002 | 14.8 |
20 | 和歌山 | 13,406 | 14.3 |
21 | 広 島 | 39,405 | 14.0 |
22 | 福 井 | 10,723 | 13.9 |
23 | 岩 手 | 17,081 | 13.8 |
24 | 青 森 | 17,255 | 13.7 |
25 | 京 都 | 35,100 | 13.5 |
26 | 福 島 | 25,122 | 13.5 |
27 | 山 梨 | 10,840 | 13.3 |
28 | 山 形 | 14,342 | 13.2 |
29 | 沖 縄 | 18,862 | 13.0 |
30 | 奈 良 | 16,899 | 12.6 |
31 | 新 潟 | 28,285 | 12.6 |
32 | 群 馬 | 24,056 | 12.3 |
33 | 大 阪 | 105,994 | 12.0 |
34 | 兵 庫 | 65,212 | 11.9 |
35 | 長 野 | 23,730 | 11.5 |
36 | 三 重 | 19,720 | 11.0 |
37 | 宮 城 | 25,463 | 11.0 |
38 | 栃 木 | 20,964 | 10.8 |
39 | 茨 城 | 30,855 | 10.7 |
40 | 静 岡 | 38,392 | 10.5 |
41 | 岐 阜 | 20,320 | 10.2 |
42 | 滋 賀 | 14,337 | 10.2 |
43 | 千 葉 | 59,700 | 9.5 |
44 | 東 京 | 128,189 | 9.3 |
45 | 愛 知 | 67,507 | 9.0 |
46 | 埼 玉 | 62,804 | 8.6 |
47 | 神奈川 | 74,461 | 8.1 |
- | 全 国 | 1,546,554 | 12.2 |
(e-Stat「平成30年医療施設(動態)調査」)
2018年(平成30年)データでは、全国の千人当たり病床数は12.2床となっています。
人口に対して最も多いのが千人あたり25.5床の高知県、反対に最も少ないのは8.1床の神奈川県となっています。首都圏は軒並み低く、東京も9.3床と全国では下位に位置しています。人口の多さの割に病床は少ないという実態です。
2019年に厚生労働省は、全国の公立病院と日本赤十字病院などの公的組織が運営する病院の診療実績を調査・分析し、実績の少ない病院や近くに同様の実績の病院があるなどの理由で、再編や統合が必要な424の病院を公表しました。
424病院は「再編検討を」 厚労省、全国のリスト公表 :日本経済新聞
下記が現在検討されている、病院の再編・統合数の都道府県別の上位10県です。
再編・統合が検討される病院数が多い都道府県ランキング
順位 | 都道府県 | 対象病院数 |
---|---|---|
1 | 北海道 | 54 |
2 | 新潟 | 22 |
3 | 宮城 | 19 |
4 | 長野 | 15 |
4 | 兵庫 | 15 |
6 | 静岡 | 14 |
6 | 山口 | 14 |
8 | 岡山 | 13 |
8 | 広島 | 13 |
8 | 福岡 | 13 |
- | 全国計 | 424 |
(厚生労働省資料)
再編・統合の検討を求められている病院と今回の影響
上記再編(削減)案は、高齢化と人口減少で2025年に必要な病床数は19年より約5万床減少するとみられることから、病床削減や診療機能の縮小などを含む病院の再編・統合を行い、地域医療の効率化を進めるのを狙いとしています。
ただ病院の機能縮小や統合には住民の反発も予想されています。
また、医療費の削減のために病床数を減らしたイタリアで新型コロナ感染による医療崩壊が起きたことで、今後の再編議論にも大きな影響を与えてくるかもしれません。
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