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医療従事者数ランキング(G7)、日本の医師数ランキング(医師偏在指標)

 

医療従事者 イメージ

 

人口あたり医師数、看護師数を検証

日本の人口あたり病床数は他国に比べて非常に多いという状況です。

 

 

 

しかし、医療のキャパシティを測る指標は病床数だけではありません。病床をハードとするなら、ソフトにあたる医師数や看護師などの医療従者数も大変重要な要素といえます。
そこで今回は、OECD Health at a Glance 2019から医療従事者数、具体的には医師数と看護師数を合わせた人数のランキングを見ていきたいと思います。
対象国としては、OECD加盟国の中の先進7カ国に加え、現在、新型コロナウイルスの感染拡大ペースの速いスペインとスイスを加えた計9カ国で比較いたします。

 

世界の人口あたり医療従事者数ランキング(G7+2カ国)

順 位 国 名 医師数 看護師数 合 計
1 スイス 4.3 17.2 21.5
2 ドイツ 4.3 12.9 17.2
3 アメリカ 2.6 11.7 14.3
4 フランス 3.2 10.5 13.7
5 日本 2.4 11.3 13.7
6 カナダ 2.7 10.0 12.7
7 イギリス 2.8 7.8 10.6
8 イタリア 4.0 5.8 9.8
9 スペイン 3.9 5.7 9.6
OECD平均 3.5 8.8 12.3

 (参考:OECD health at a Glance 2019 website)

 

次に世界の新型コロナウイルスの感染状況です。

 新型コロナウイルスの感染者数、死亡者数状況(5/5データ更新)

国名 感染者 死亡者数 致死率
アメリカ 1,180,375 68,922 5.84%
スペイン 218,011 25,428 11.66%
イタリア 211,938 29,079 13.72%
イギリス 169,583 28,809 15.02%
フランス 169,583 25,204 14.86%
ドイツ 166,152 6,993 4.21%
カナダ 61,957 4,003 6.46%
スイス 29,981 1,784 5.95%
日本 15,078 536 3.55%
世界総計 3,583,177 251,537 7.02%

(参考:Comical Piece )

https://comical-piece.com/korona-virus-number/


あくまでも現段階での検証ですが、新型コロナ感染の国ごとの状況で、医療従事者数の多いドイツやスイスは致死率は大きく増えておりません。逆に医療崩壊を指摘されているイタリアやスペインの医療従事者数はOECD平均を大きく下回っていることがわかります。

(追記:5/5現在、医療従事者数でOECD平均以上のフランスも致死率は大きく上昇しました。)

 

日本の医療従事者数はOECD平均以上だが医師数は少ない。

今回のOECDデータで、日本の医療従事者数は医師・看護師合計はOECDの平均を上回っています。日本は病床数が多いので、特に病棟勤務の看護師のニーズも多く、一定の人数が確保されているものと考えられます。
しかしながら医師数に限定してみると、上記の対象9カ国内では、最も少ない国ということがわかります。この結果を見る限り、実は日本は医師不足といえる状況になっています。

日本ではかねて、大学病院や救命救急病院などでの医師の労働時間の異常な長さが大きな問題となっていました。
最近になって、国は医師の労働環境を改善するための医師の働き方改革として、各種の施策を打ち出し始めました。
一方で、急な改善は見込めないこと、そして実は国内でも地域ごとの配置のバランスに大きな偏りがある(医師の偏在)という議論も出てきて、人員の適切な配置で少しでも解消しようという考え方もあります。
今後、国は医師の地域ごとの偏りを無くして、将来的な需要と供給のバランスをとっていく方針を示しています。

診察する医師 イメージ

 

医師の偏在が起きた原因は

以前は医局制度が強力に作用していて、大学病院が医師・研修医の人事権をすべて掌握していました。よって地方大学の医局が研修医を受け入れる代わりに、へき地や地方に医師を送ることで地方病院の医師不足も解消していました。しかしながら、2004年から導入された新しい研修医制度によって、新人が任意の研修先を自分で選べるようになりました。その結果、都市部に研修医が多く流れていったことで地方の医師不足の問題が加速したと考えられます。

 

 

医師の偏在指標とは

単純に人口に対する医師数ではなく、高齢者が多く医療需要が高いか、若い医師が多いかなど、地域ごとの医療の状況を考慮して、医師の偏在状況を考慮して、指数化したものです。数値が高いほど医師の充足率が高くなります。

下記ランキングは、偏在指標から医師数過剰とされる都道府県の上位10と医師数不足の下位10をランキングにしたものです。(青字が医師過剰、赤字が医師不足)

 

医師数の”過剰”/”不足”都道府県ランキング TOP10(偏在指標順)

順位 都道府県 偏在指標 過剰・不足医師数
1 東京 329.0 1万3295人
2 京都 314.9 1291人
3 福岡 300.5 2684人
4 沖縄 279.3 99人
5 岡山 278.8 815人
6 大阪 274.4 4393人
7 石川 270.4 217人
8 徳島 265.9 268人
9 長崎 259.4 49人
10 和歌山 257.2 193人
- 全国 238.3

(2万3739人)

38 千葉 200.5 -2302人
39 長野 199.6 -550人
40 静岡 191.1 -2187人
41 山形 189.4 -653人
42 秋田 180.6 -646人
43 埼玉 178.7 -5040人
44 福島 177.4 -3500人
45 青森 172.1 -1225人
46 新潟 169.8 -1969人
47 岩手 169.3 -1361人

 (厚生労働省「第66回社会保障審議会医療部会/医師偏在指標、必要時点における必要医師数等」)

 

医療崩壊させないための「三位一体の改革」

厚生労働省は、すべての都道府県で人口が減少する2040年を見据えて、医療の崩壊をさけけるために「地域医療構想」「医療従事者の働き方改革」「医師偏在指数対策」の3つを三位一体で推進する改革に取り組んでいます。

これらの改革は現場の医療従事者や医療を受ける患者・家族も巻き込んで進める必要があり、相反する利害の調整や人々の意識改革も求めらえる難易度の高い改革と考えられます。

 

まとめ

現在、海外の一部の国では、医療従事者も疲労困憊しています。

現在の日本の医療環境で最も懸念されるのは、医師不足の問題です。病床数に対して医師数が少ない状況です。

また一昨年には、医学部入試における女子受験者の一律点数引き下げ問題がありました。日本の女性医師数の割合は、他国に比べて非常に低い状況にあります。

医師の働き方改革による労働環境の改善に併せて女性医師の採用増を、医師偏在解消策と並行して行って欲しいと思います。

 

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