はじめに
国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)が12月15日に閉幕しました。
過去最長の会期でしたが、妥協的な合意にとどまりパリ協定に黄色信号が灯りました。
今回は世界のCO2排出量ランキングを見ていきたいと思います。
パリ協定と温室効果ガス対策
2016年11月、地球温暖化防止を目指して「パリ協定」が発効しました。2020年以降の、途上国も含めた各国の温室効果ガス排出についての取り組みを決めた国際的なルールで、締結国には「自主的な消滅目標を国連に提出すること」「達成のため、削減にむけた国内の対策をとること」を義務付けています。
しかし、19年11月にはアメリカがパリ協定からの正式離脱を表明し、中国においても国際的に製造が禁止されているフロンを製造している可能性が指摘され、2大排出国への批判も高まっています。
18年10月に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書は、世界の平均気温上昇を産業革命以前比1.5度未満に抑制しなければ、自然災害や環境面のリスクが深刻になると指摘し、世界規模の抜本的な対策をとらなければ、早ければ2030年にも1.5度上昇すると警告しています。(※パリ協定でのCO2削減目標は2度未満。1.5度未満は努力目標値)
国連によると、この気温1.5度未満という目標を達成するには、2030年の温室効果ガス(GHG)排出量を世界全体で現在よりも55%削減しなければならないとしています。
世界のCO2排出量ランキングTop10
(順位: 国地域・CO2排出量(t)・ 対前年増減 ・ 排出量シェア2018年)
1位: 中国 94億2871万 ↗ 27.8%
2位:アメリカ 51億4516万 ↗ 15.2%
3位:インド 24億7907万 ↗ 7.3%
4位: ロシア 15億5077万 ↗ 4.6%
5位: 日本 11億4843万 ↘ 3.4%
6位: ドイツ 7億2567万 ↘ 2.1%
7位: 韓国 6億9758万 ↗ 2.1%
8位: イラン 6億5636万 ↗ 1.9%
9位: サウジアラビア 5億7102万 ↘ 1.7%
10位: カナダ 5億5029万 ↗ 1.6%
(出典:BP「Statistical Review of World Energy」)
CO2世界排出シェアの3割弱を占める中国
排出量1位の中国は世界排出シェアの3割弱を占めております。中国の動向ですが、京都議定書では、温暖化の責任は先進国にあるとする二分論で削減義務を拒否したものの、18年12月のCOP24では二分論を唱えながらも温室効果ガスの削減目標を提示しました。
背景には、大気汚染の深刻化や水不足、砂漠化進行に対する国民の不満があると分析されています。
一方で、中国国内においてフロンガスが大量に放出されているとする日米英を中心とした研究チームからの報告もあがっています。
現在フロンガスはオゾン層を破壊するだけでなく、温室効果がCO2に比べて実に4660~1万4400倍も高いことから、モントリオール議定書で1995年末より製造が全廃となっています。
各国の削減目標
パリ協定に基づく各国のGHG(温室効果ガス)削減目標は以下の通りです。
日本 ・・2030年までに2013年比でGHG26%削減
中国 ・・2030年までに、2005年比でのGDPあたりの二酸化炭素排出を60~65%削減する。2030年ごろにCO2排出のピークを達成する。
アメリカ・・2025年までに2005年比でGHG26~28%削減
EU ・・2030年までに1990年比でGHG40%削減
※GHG=温室効果ガス
日本の削減目標への現状と取り組み
2018年度の日本のCO2排出量は、11億4843万t。2017年度に比べて-2.0%だったものの、削減ペースは鈍化しており30年度までに26%削減の目標達成は困難な状況になっております。
2019年4月に政府は国連の提言に準ずる形で、日本が排出するCO2を2070年ごろまでに実質ゼロとする新たな目標をまとめました。
具体的な施策としては、再生可能エネルギーや原子力の活用と、水素の安価な製造や排出されたCO2を回収して資源として活用する新技術の採用などを掲げました。
原子力の活用については事故の危険性を抑えるとされる次世代原子炉の開発を進めることを盛り込みました。
しかし、現状として原発再稼働は進んでおらず、さらに石炭火力の新増計画は相次いでいて、経産省の試算では現状ベースの新増設が続けば、30年度のCO2排出量の削減目標を7千万トンほど超過するとのことです。
一方、ヨーロッパにおいては、フランス、ドイツ、イギリスが相次いで「2050年に温室効果ガスの排出をゼロにする」との方針を発表し、温暖化対策でアメリカや日本と対照的に世界をリードする姿勢を鮮明に示しました。
日本もCO2排出大国としてより一層真剣に取り組んでいかなければならない状況です。
<関連記事>