UAEの水不足対策
日本人にとっては少しびっくりな話ですが、長年にわたり絶対的な水不足になやむアラブ首長国連邦(UAE)では、人工降雨(クラウド・シーディング)技術を活用して、計画的に雨を降らせているそうです。
UAEでは2017年だけで242回もの人工降雨が試されました。(成功率は3分の1)
これは、雨雲をレーダーで見つけたらプロペラ機が出動して吸湿性の高い塩を散布し、それを雲に吸い込ませて雨雲の粒をより大きな水滴に成長させて、雨にとして降らせる手法です。
実はこの人工降雨は世界50カ国(日本含む)で研究が行われているとのことです。
迫る世界的な水不足。戦後から始まった人工降雨の研究の最先端とリスクとは | ライフハッカー[日本版]
しかし、この技術には大きな欠点もあります。それは降雨量まではコントロールできないため、想定以上に雨が降り過ぎると排水インフラが貧弱な街ではたちまち洪水がおこってしまうということです。
特に国境を接した国家間では洪水によるトラブルや水の奪い合いなどから紛争にもつながりかねません。
そしてUAEはさらなる仰天のプロジェクトを立ち上げることになりました・・
今回は世界の水資源についてのランキングです
地球の表面はおよそ3分の2が水でおおわれています。
その水量は14億k㎥と推計されていますが、実は人間が利用可能な水はわずかに0.01%しかないと言われています。
地球の水の約97.5%は海水ですが、残りの2.5%の淡水もそのほとんどが氷河や地下水で人々が簡単に利用できる状態にありません。
地球上の水の内訳
- 海水・・97.5%
- 淡水・・2.5%(多くは氷河や地下水)
- 人間が利用しやすい状態の淡水・・0.01%
水ストレス問題
近年「水ストレス」という言葉がとりざたされています。
この水ストレスとは日常生活を送るのに不便を感じるほど、水が足りない状態のことを言います。
水ストレスの最低基準:
人口1人当たりの最大利用可能水資源量が
年間1700㎥を下回る
この水ストレス基準値には飲料水の他にも必要な水がすべて含まれます。
いわゆるバーチャルウォーター(仮想水)と呼ばれるものや生活・農業・工業・エネルギーおよび環境に必要な水などです。
輸入食料をすべて国内で生産したと仮定したときに必要な水の量。
食料生産には大量の水を使用するため、食料を海外輸入するということは言い換えれば生産に必要な水を自国で使わずに済んでいるともいえる。
日本は仮想水の使用量が世界最高レベルに高い国となっている。
バーチャルウォーター以外にも、工業で使われる水なども利用水資源の計算に入ります。1例をあげると我々が普段身につける衣服も、その生産の過程で水を必要とします。よって水ストレスの計算ではこのような水も含めて計算しています。
その1人当たりの量が、先の基準(1700㎥)を下回ると水ストレス下にある状態と言えます。
さらに
1000㎥を下回ると「水不足」、500㎥を下回ると「絶対的な水不足」
となります。
世界の人口の増加や気候変動の影響で、2050年には世界人口の約40%以上が、深刻な水不足におちいると言われています
水が不足するということは、食料も生産することができなくなり食料不足になることも意味します。
水不足 :1人当たり1000㎥/年間未満
絶対的水不足:1人当たり500㎥/年間未満
それでは世界の水資源のランキングです。
以下のランキングデータは自然循環による再生が可能な淡水資源量で算出されています。(FAO「AQUASTAT」)
淡水資源が少ない国ランキング(年間)
順位 | 国・地域名 | 1人あたり年間淡水資源量 |
---|---|---|
1位 | クウェート | 5㎥ |
2位 | アラブ首長国連邦 | 16㎥ |
3位 | カタール | 26㎥ |
4位 | サウジアラビア | 76㎥ |
5位 | イエメン | 78㎥ |
6位 | モルティブ | 82㎥ |
7位 | バーレーン | 84㎥ |
8位 | シンガポール | 107㎥ |
9位 | リビア | 112㎥ |
10位 | マルタ | 121㎥ |
(出典:FAO「AQUASTAT」2013~2017年値)
【参考】日本:3397㎥
水資源の地域偏差と水不足対策
世界トップの水資源を誇るアイスランドが年間50万㎥あるのに対して、ワースト1位のクウェートはわずかに年間5㎥ですからその差は10万倍もの開きがあります。
世界的にみると水資源は地域に大きな偏りがあることが見てとれます。水不足は中東や北アフリカ、西アジアで深刻な状況です。
砂漠地域ではそもそも降水量が少ない上に河川や湖もほとんどないため、淡水が絶対的に不足しています。
さらに温暖化による気候変動によって干ばつがそれに追いうちをかけている状況です。
このような状況から、現在中東地域の多くの国は下水の再利用(日本2%、中東80%)や淡水化プラントで海水から塩分を取り除いて飲料水を作る方法でまかなっています。
水資源不足ランキングの上位の国でも、経済的に豊かな国ではこの淡水化プラントによって水の供給が十分に出来るようになりました。
しかしこれは莫大な費用が掛かるうえに、プラントが排出するCO2などが環境に悪い影響をおよぼします。
そこでUAEなどの国では冒頭にご紹介した人工降雨などを取り入れるようになっていきました。
そして2017年にはさらなる驚きのプロジェクトを打ち立てることを発表しました。
それが「氷山プロジェクト」です。
南極圏→ペルシア湾に氷山を引っ張って来て飲用水にするプロジェクトが進行中、UAEの事業家が計画 - U-NOTE[ユーノート] - 仕事を楽しく、毎日をかっこ良く。 -
このプロジェクトは南極の巨大な氷を10か月かけて船で中東まで運ぶという計画です。
この計画を提唱した実業家アブドラ氏は、プロジェクトが成功すれば5年間でのべ100万人分の飲用水を確保できる上に、巨大な氷を運び込むことによって周辺上空に雲ができ、その雲が内陸に移動することで砂漠に雨を降らせることもできると言います。
その一方で、環境への影響などが懸念されています。
アブドラ氏はインタビューで「環境アセスメントはすでに行っていて、現在行われている海水淡水化に伴い発生する排水による海の生態系への深刻な影響と比べれば自然への影響は小さい」と語っています。
日本の水道システムは世界最高水準
続いては日本の状況です。
SDGs(持続可能な開発目標)では6番目の目標として、「すべての人々に水と衛生へのアクセスの持続的な管理を確保する」ことを掲げています。
日本の淡水資源量は豊富で世界の水不足の国からすれば非常に恵まれた環境です。
とはいえ日本は人口も多いため、1人あたりの淡水資源量の年間3397㎥は世界的レベルではそこまで高いわけではありません。
ですが日本は水道のシステムが素晴らしく高いレベルになっていて、世界トップクラスの品質を維持しています。
日本人にとって水道水が飲めるのは当たり前ですが、水道水が飲める国は世界中でわずか15カ国しかないそうです。
日本の水道水が綺麗?世界の水道水と比較して分かった驚きの事実!【情熱の水earthwater】
また水道の効率性も非常に高いレベルを有しています。
アメリカやイギリスなどの先進国でさえも開発途上国並みに無収水(Non Revenue Water)が多く、日本は世界に誇れる技術とサービスを備えていると言えます。
日本の水道効率性が高い理由は、メンテナンスへの意識の高さ、品質管理のきめ細かさなどがあります。
そして日本の水分野のもう一つの優れた点は、地方自治体の専門家が開発途上国などに行きノウハウ提供などの技術協力を行っていることです。
われわれが当たり前に考えている日本の水道システムのありがたさを、改めて再認識する必要がありそうです。
この技術を基にして国際協力機構が実施するODAをはじめ、民間企業が主体の国際展開により発展途上国へ安全な水道の構築なども行われています。
まとめ
- 人間が利用しやすい状態の水は、地球の水の0.01%ほど
- 1人当たり水資源量では地域偏差あり、中東・アフリカなどが少ない
- 中東地域の水不足対策、「淡水プラント、人工降雨、氷山プロジェクト」
- 日本が世界に誇る水道技術、開発途上国への技術支援。