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世界の高速鉄道ランキング(最高速度記録)

JR東海のリニア中央新幹線は2027年に東京-名古屋間で開業した後、2037年~2045年には大阪まで延伸して全面開通の計画となっています。

しかし、現在南アルプストンネル静岡県区内で大井川の流量問題を巡り工事が中断しており、いまだ工事再開のメドがたっていません。

これにより2027年の開業遅れは不可避な状況となっています。

 

今回は世界の高速列車についてです。

 

リニアモーターカー

まずは世界の高速列車の最高速度ランキングの発表です。

ランキングは営業運転速度ではなく、試験走行(無乗客)における最高速度です。

 

世界の列車 最高速度記録ランキングTOP13

順位 列車名 国名 速度(時速) 参考年
1 L0系(リニアモーターカー) 日本 603km/h 2015年
2 MKX01(リニアモーターカー) 日本 581km/h 2003年
3 SNCF TGV POS フランス 574.8km/h 2007年
4 ML500 (リニアモーターカー) 日本 517km/h 1979年
5 SNCF TGV Atlantique フランス 515km/h 1990年
6 Transrapid SMT(上海リニア) 中国 501km/h 2003年
7 InterCity Experimental ドイツ 498.8km/h 1988年
8 CRH380BL 中国 487.3km/h 2011年
9 300X(新幹線955形電車) 日本 443.0km/h 1996年
10 復興号(CR400AF) 中国 420km/h 2017年
11 LGV Sud-Est フランス 379.8km/h 1981年
12 ETR 500-Y イタリア 362.1km/h 2009年
13 新幹線H5系 日本 320km/h 2014年

 (出典:Pocket link.comを基に作成)

13 of the fastest trains around: World record breaking trains

 

最高速度トップは日本のリニアモーターカーL0系

現時点の最高速度記録は日本の「リニアモーターカーL0系」です。2015年に記録した時速603kmはギネス世界記録にも認定されています。

2位のMKX01も同じく日本のリニアですが、これは現行の1世代前の車両になります。

しかし、いずれも営業運転はいまだ実現していない車両のため、営業運転している車両としてはフランス国鉄の「TGV」(同3位)が最上位となっています。

またランキング6位には上海のリニアモーターカー「トランスラピッド」が入っています。

そして7位にはドイツの新幹線と呼ばれる「インターシティ・エクスプレス(ICE)」がランクインしております。こちらは1988年に列車として世界初となる時速400km超えを達成しました。

8位は中国の高速鉄道「CRH」です。これは北京市と上海市を結ぶ全長1318km にも及ぶ距離を誇り2011年に開通しました。

 

以上、ランキングトップ10に入っている国は日本、フランス、ドイツなど旧来からの鉄道大国と、近年鉄道大国へと成長した中国を加えた4カ国となっています。

 

ちなみにランキングにはありませんが、実は最近韓国も「HEMU430X」という高速鉄道を開発しています。

HEMU430Xは試験速度421km/時を記録しており、10位にランクインの中国の復興号をやや上回る速度となっています。尚、営業運転での最高速度は370kmを予定しているようです。

ちなみに韓国高速鉄道といえばKTXが知られていますが、これはフランスから導入したものです。(2004年開業:最高速度305km/時)。

しかしながら、KTXは車両トラブルが絶えないことが問題になっており、全面的に設計を刷新したHEMU430X開発に舵を切ったと考えられます。

 

上海リニアはドイツが開発

冒頭のランキングでは国産リニアモーターカーから3つの試験運転車両がランキングしました。

6位の中国の上海リニアモーターカー「トランスラピッドSMT」の最高速度記録は時速501kmです。

しかしながら、上海リニアは2003年にすでに営業運転を開始しています。

ここで疑問となるのが過去にリニア開発をしていた実績のない中国が、なぜ2003年という早いタイミングで開業することができたのか、非常に不思議なところです。

実はこのリニアモーターカーは長年日本と共にリニアモーターカー研究で世界をリードしていたドイツが開発をした車両とのことです。

 

ドイツと日本のリニア研究開発競争

ドイツのリニア研究スタートは日本よりも古く1922年から始まっておりました。

その後しばらく戦争の影響で研究が止まっていましたが、1960年代に入り再び旧西ドイツが研究を再開しました。日本がリニア研究を始めた時期も同じころです。

そして1971年にドイツは世界初となる有人の鉄道磁気浮上運転に成功しました。

 

1970年代から90年代前半までは、日本とドイツでリニアモーターカーの最高速度記録の速度記録を互いに塗りかえていき、両国がしのぎを削る時期が続きました。

その後のドイツは、一度はリニア開業を表明したものの、事業予算が当初計画より大幅に増加し巨額化していったことで、ついには国内での事業化を断念しました。

しかしドイツ製のリニアモーターカー「トランスピッド」は中国によって上海空港までの営業用列車として2000年に正式採用され、2003年に開業に至りました。

  

上海リニア

 

高速鉄道における日中競争 

リニア開業においてドイツ製車両を導入することで日本に先行した中国ですが、高速鉄道の長さ(総延長距離)においても40年間1位にあった日本を2009年に逆転しています。

現在の日本の高速鉄道総延長距離は3300キロですが、現在の中国における高速鉄道の総延長は3万キロにもなっており、日本をはるかに超える距離となっています。

特筆すべきはその建設スピードで、2017年の1年間のみで3000キロ以上もの距離を敷設しました。

日本が1964年から2016年まで、50年以上かけて建設してきた新幹線の総延長距離2765kmを中国はたった1年で超えてしまったことになります。

もちろん日本の新幹線は50年以上の歴史において、運行側の不手際等や車両や線路の施設や設備の異常に起因する乗客の死亡事故は一度も発生しておらず、「新幹線の安全神話」と呼ばれる高い安全性を実現しています。

 

現在は日本と中国で世界に対して高速鉄道(新幹線)の輸出競争が過熱してます。

安全性と正確性などの性能面を強みにする日本とスピードとコストを売りにする中国との競争は激しさを増しています。

 

 

中国が独自開発のリニアを建設予定

中国浙江省は今年4月中旬、上海と杭州・寧波を結ぶリニア路線を新たに建設するとの構想を打ち出しました。

これは中国製のリニアを導入する可能性が高く、地元では「時速600kmで2都市を結べば所要時間20分」と話題を呼んでいます。

中国の開発メーカーは今年中にも国産リニアのプロトタイプを完成させ、来年中には試験走行を始めたいとも述べています。

この計画が実行されると日本のリニアよりも先に開業する可能性も否定できません。

 

他にも現在世界でリニアモーターカーの建設を目指している国は、日本と中国以外にも、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イタリア、インド、イスラエル、イラン、韓国などの多くの国々がリニア建設を目指して研究を進めているとされています。

 

 

イーロンマスクのハイパーループ構想

1960年代に研究が始まった日本のリニアが60年間もの歳月をかけけて開業を目指している一方で、アメリカのスペースX創業者兼テスラ創業者のイーロンマスク氏はまたしても途方もない構想を打ち立てています。

それがハイパーループ構想です。

 

ハイパールーフ イメージ図

ハイパーループ構想

ごく簡単にいえば真空チューブを作って、その中に鉄道を走らせるというものです。

イーロンマスク氏は2013年にこの構想を打ち出しました。

このハイパールーフが実現するとその最高速度は時速1288kmにもなります。

理論上はJRのリニアモーターカーの2.5倍、一般的な旅客機の1.5倍ものスピードです。

イーロンマスク氏はこのハイパールーフでロサンゼルスとサンフランシスコを結ぶ構想を描いています。

現在この区間の移動は、飛行機の移動が最も速く1時間半とされていますが、この計画が実現するとロサンゼルスとサンフランシスコの間をわずか36分で結ぶ計算になります。

 

ハイパールーフ イメージ図

このハイパーループ構想はアメリカ以外にも欧州や、中国、インド、中東の国々が関心を示しているようです。

ハイパーループ、スイスで現実に? - SWI swissinfo.ch

 

 

リニア中央新幹線によって何が変わる?

まずは各地方都市までの移動時間が大幅に短縮されます。

品川駅から、リニア沿線各駅までの所要時間(※駅名はいずれも仮称)

  • 神奈川県駅(相模原市):10分程度
  • 山梨県駅(甲府市):25分程度
  • 長野県駅(飯田市):45分程度
  • 岐阜県駅(中津川市):60分程度
  • 名古屋駅(名古屋市):最速40分
  • 大阪市駅(大阪市):最速67分

 

そして、リニア中央新幹線は、東京ー名古屋ー大阪の移動時間を大幅に短縮するということ以外にも、東海道新幹線の老朽化に伴う改修時や大地震などの災害等でマヒ状態になった歳にも東京―名古屋―大阪の大動脈における相互バックアップ機能を果たす役割が期待されています。

もちろん短時間で移動できるようになること以外にも、リニア開業によって「スーパー・メガリージョン(超巨大経済圏)」が誕生し、莫大な経済効果が生まれることも大きなメリットとして考えられています。 

それと同時に東海道新幹線の役割にも変化が起こるようです。JR東海によると「のぞみ」中心のダイヤから、静岡県内にも数多く停車する「ひかり・こだま」中心のダイヤに変わると見込まれます。

それによって、これまで通過する列車の多かった東海道エリアの沿線都市へもアクセスが向上し、観光路線へと変貌する可能性が大きくなります。

 

 

東京1極集中への打開先になるか?

リニア中央新幹線は東京圏への1極集中を分散する効果も期待されています。

今の東京圏は世界でもまれに見る人口集中となっています。全人口に占める東京圏の人口の割合は29%と、世界の主要都市圏の中でも突出して高い状況です。

世界の都市圏人口ランキング2020~東京圏が世界1位!~ - Shoko-Ranking

リニア開業によって東京圏のみへの集中から、大阪圏や名古屋圏などの都市圏とその沿線都市への分散も期待されます。

東京〜大阪でのリニア開通の頃には、北陸新幹線-金沢〜新大阪間での開通も見通されており、大阪圏での利便性も更に向上するものと想定されます。

 

現在、大井川流量問題が取沙汰されていますが、本来リニアはCO2の排出量が自動車や飛行機に比べて低く抑えられることもメリットの一つとして考えられておりました。

リニアモーターカーで東京~大阪間を乗客1人運ぶために必要なエネルギーは、航空機の約半分、乗用車の約4割と試算されています。

多くの電力を消費するものの、自動車や飛行機に比べて直接的な二酸化炭素を出さないリニアは、地球温暖化対策としても建設の意義があるとの見方もあります。

そして将来、世界最高速度記録を持つリニア中央新幹線が営業運転を開始し、日本の輸出産業へ成長していくことにも期待したいところです。

 

まとめ

この記事をざっくり要約すると

  1. 最高速度トップは日本のリニアモーターカーL0系

  2. ドイツと日本のリニア研究開発競争、上海リニアはドイツ由来

  3. 高速鉄道における日中競争、今後中国は独自のリニアを建設予定

  4. イーロンマスクのハイパーループ構想。想定速度はリニアの2倍

  5. リニア中央新幹線は巨大経済圏の誕生と同時に東京1極集中への打開策となるか。

 

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