農林水産省によりますと、新型コロナの感染拡大の影響により、5月1日時点で世界15カ国が小麦、コメ、野菜などの輸出を制限しているということです。
今のところ、日本においては輸入元のアメリカやカナダが制限する可能性は低いとのことですが、アフリカなどの途上国では食糧不足が更に深刻化する懸念が生じています。
今回は世界の栄養不足人問題について調べてみました。
今も世界人口の9人に1人が飢餓に苦しむ
SDGs(持続可能な開発目標)では”2030年までに飢餓ゼロにする”という目標を立てております。
しかし、国連の報告によると、飢餓人口の増加は現在も続いており、2018年のデータで8億2000万人、世界の9人に1人は飢餓に苦しんでいるといいます。実に世界人口の1割以上に相当します。
ここ数年は飢餓人数が増加傾向になっていておよそ10年前の状態に逆戻りしています
またSDGsの進展をモニタリングするための調べでは、20億人以上の人々が安全で栄養のある十分な量の食糧を入手できないと推定しています。
そして北米と欧州などの地域においても8%の人々が同じ状況となっています。
飢餓はなぜ起きているのか?
WPF(国連世界食糧計画)によると、世界にはすべての人々が食べるのに十分な食料が生産されているにも関わらず、世界には飢餓問題が存在しています。
そして飢餓問題は特にサハラ以南のアフリカ、南アジアに集中しています。飢餓蔓延率はサハラ以南のアフリカ(サブサハラ)が最も多く、飢餓人口は南アジアが最も多いと言われています。
飢餓の原因としては、洪水や干ばつといった自然現象(異常気象)をはじめ、紛争、経済の低迷、食料高騰、また最近ではバッタの大量発生による被害なども取沙汰されています。
また異常気象の要因として、CO2などの温室効果ガスによる地球温暖化現象が指摘されています。
自然災害(異常気象)、紛争、経済低迷、食料高騰
次に栄養不足に陥っている人の国別人口割合ランキングです。
「栄養不足」とは・・国連食糧農業機関(FAO)の定義では、「十分な食料、すなわち健康的で活動的な生活をおくるために十分な食物エネルギー量を継続的に入手されないこと」としています。
「飢餓」とは、「栄養不足が長期にわたることで、生活や生存が困難になる状態」としています。
世界の栄養不足人口割合ランキング
順位 | 国名 | 地域 | 人口割合 |
---|---|---|---|
1位 | 中央アフリカ | アフリカ | 59.6% |
2位 | ジンバブエ | アフリカ | 51.3% |
3位 | ハイチ | 中央アメリカ | 49.3% |
4位 | 北朝鮮 | アジア | 47.8% |
5位 | ザンビア | アフリカ | 46.7% |
6位 | マダガスカル | アフリカ | 44.4% |
7位 | ウガンダ | アフリカ | 41.0% |
8位 | コンゴ共和国 | アフリカ | 40.3% |
9位 | イエメン | 中東 | 38.9% |
10位 | チャド | アフリカ | 37.5% |
【出典:FAO「Food Security Sattistics(2016~2018値)」】
中央アフリカ筆頭にサハラ以南のアフリカに集中
トップ10のうちアフリカ諸国が6カ国となっています。中でも人口当たり割合が最も高いのは中央アフリカ共和国で、紛争や自然災害などの不安定状況によって、国民の半数が飢餓状態にあります。
現在アフリカの飢餓はどんどん深刻さを増しています。2011年以降、経済の低迷や停滞が原因で飢餓人口が増加している国のおよそ半数がアフリカ諸国となっており、2018年時点の世界の飢餓人口8億2000万人のうち、アフリカ諸国だけで2億5610万人を記録しています。
2015年には紛争によって、穀物生産が紛争以前の7割減少になったとされています。
また、食料安全保障レベルがレベル3の「危機」、またはレベル4の「緊急」段階にある国はサハラ以南のアフリカ(サブサハラ)地域が半数以上を占めています。
栄養不足により有病率、死亡リスクが上昇
栄養不足によって引き起こされる問題に有病率の上昇があります。
実際、5歳未満児の死因の半数以上に栄養不良が関係しています。そして成人の場合、特に妊婦については鉄分不足による貧血やビタミン不足によるビタミンA欠乏症は母子の生死に直結するために深刻です。
そして栄養素不足に伴い免疫力が低下することによって、マラリア、コレラ、赤痢などの感染症にかかりやすくなり、肺炎や下痢などでも死亡するリスクが上昇します
特に乳幼児は、汚れた水や不衛生な環境によって汚染された水を飲むことで、下痢で命を落とすケースが少なくなくありません。
食糧問題の解決は難しい
世界で作られている穀物量は2019年で約26億トンとされています。これを世界中の人々にきっちりと分配できれば理論上は世界の穀物の過不足を解決できます。
しかし、紛争状態にある地域や道路が未整備なエリアでは、物資の運搬も困難な状況となっています。さらに頻発するテロや人道支援者への武装勢力からの攻撃で、多くの支援者が撤退を余儀なくされている状況です。
よって、現地の仕組み自体を変えることが非常に重要になってきます。その一つの方法が学校給食制度です。
学校給食制度によって、飢餓・食料問題に苦しむ子供たちを助けることに繋がります。毎日食べることすらままならない状態では学校に通うことも出来ません。
しかし、学校給食があることで、少なくとも学校に行けば食べるものには困らないという状況が作れます。
そして給食を提供することが、地域農業の生産力を高めるきっかけにもなり、プラスの循環を作りだす仕組みづくりになるとされています。
しかし、これは決して簡単なことではありません。それはアフリカなどの国々では教育の重要度が相対的に低く、その背景に貧困、衛生環境・インフラ、風習、男女格差、安全面など様々な問題が複雑に絡みあっているからです。
そしてこれらの問題が子供たちを学校に通わせることを困難にしているといわれてます。
日本の問題「食品ロス」
日本でも問題になっているのは食品ロス(フードロス)です。食品ロスとは食べ残しや売れ残りなどの「食べられるのに捨てられてしまう食品」のことを言います。
日本の食品ロスは、約632万トンと言われており、これは世界の食糧援助量である約320万トンの実に2倍近くに相当します
また国民一人当たりの食品廃棄物量は世界で6位、アジアでは1位という量です。
・日本の食品ロス632万t
≧ 世界の年間食糧援助量320万t
・日本の1人当たり食品廃棄物量は
アジア1位、世界6位
フードバンク団体の全国拡大
現在、都道府県や市町村単位での食品ロスへの取り組みは増加しています。
政府も2019年5月に「食品ロス削減推進法」を交付しました。
またフードバンク団体も2002年に国内で初めて設立されて以来、現在その数は全国に広がっています。
「フードバンク」とは・・
包装の傷みなどで、品質に問題がないにもかかわらず市場で流通出来なくなった食品を、企業から寄附を受け生活困窮者などに配給する活動およびその活動を行う団体。~Wikipediaより引用~
農林水産省のホームページでは、全国120のフードバンク団体を紹介しています。
「世界経済フォーラム」で2030年までに食品廃棄物半減の目標
ダボス会議で有名な「世界経済フォーラム」では、CO2排出量の多い重工業で、2050年までにCO2排出量をゼロにするミッションを背負った活動を8つ発足させました。
対象となった主要8業界以外からも、参加を表明する業界が現れました。
その内の一つの食品小売業界においては、CO2排出削減のため、2030年までに食品廃棄物を半減させる活動が発足しました。
しかしこの分野の活動に積極的なのはやはり欧米企業です。日本からは唯一イオンが加盟することとなりました。
世界の栄養不足の問題は、気候、紛争、貧困など様々な要因が絡んでおり、根が深く解決は容易ではありません。今回のコロナ禍でさらに飢餓人口が増えることも想定されます。
日本においては、食品ロスが問題になっていますが、更に学校休校に伴う給食の休止によって、多くの食品が廃棄されています。
現在、フードバンクが全国に広がりを見せており廃棄食料のマッチングが更に促進されることに期待かかかっています。
そして、食品ロスの問題は、企業の国際基準の視点にたった取り組みが更に重要になってくるものと思われます。
まとめ
- 世界人口の9人に1人が飢餓に苦しむ
- 飢餓の要因は紛争、自然災害、経済低迷、食料高騰など
- 栄養不足率の高い国はサハラ以南のアフリカに集中
- 栄養不足で有病率も上昇。5歳未満児の死因の半数以上は栄養不良と関係
- 日本の食品ロスは世界の年間援助量の約2倍。フードバンクの団体は増加。